個人型確定拠出年金「iDeCo」への加入を決めたものの、実際に手続きを進めると「運用商品」を選ばなくてはなりません。
「なんとなく適当に選んでみたものの本当にこれで良いのだろうか?」
「とりあえず元本が減らないように定期預金を選んでおこう」
というように、自信をもって商品を選べていない人も多いようです。
FPとして結論(というかオススメ)をいうと
iDeCoの運用資産は「REIT(不動産投資信託)」がいいと思います。
というか私はそうしています。
その理由について解説していきたいと思います。
Contents
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
そもそも「iDeCo」が何なのかよくわかっていない(けど加入だけしてみた)人も多いかもしれません。
その名の通り、国民年金とは別に個人で年金を作ることのできる制度です。
国民年金だけでは老後の資産として足りないのではないかという不安が広がるなかで急速に利用が拡大しています。
通常の「銀行預金」とは異なり、年金なので60歳まで積み立てることになる点と、積み立てている資産は現金ではなく「投資信託」という運用商品で運用(投資)することが特徴です。
最大のメリットとしてはiDeCoとして拠出したお金はすべて「所得控除」の対象になるため、支払う所得税を減らす効果がある点です。
サラリーマンであれば年末調整で払いすぎた所得税が戻ってくることになるので、それで旅行に行けるくらいのお金を浮かせることが出来ます。
運用資産は「定期預金」ではなく「投資信託」を選ぼう

ここで問題になってくるのが、iDeCo特有の「運用資産」、つまり自分の資産を何で運用するかを選ばなければならない点でしょう。
iDeCoの「定期預金」におけるワナ
特に投資をしたことのない人であれば投資信託を急に選べといわれても難しいですよね?
そんな人のために(?)投資信託ではなくて「定期預金」つまり現金のままにしておくという選択肢もありますが、これを選んでしまうとあまりiDeCoのメリットを生かすことが出来ません。
なぜならiDeCoは投資して増えた分のお金が非課税(通常であれば利益には税金がかかる)となるという利点があるので、これを生かすためには増えることのない定期預金では活用としてイマイチなのです。
利益のでる「投資信託」を選ぶ
投資信託とは、投資のプロである運用会社が投資家から集めたお金をまとめて運用してくれる商品です。
例えばどんな株をどれだけ、どのタイミングで買うのが適切かわからない(そんなことをしている時間がない)投資家は投資信託を持っておくことでその分のお金をプロが勝手に運用しておいてくれるという形をとることが出来るわけです。
もちろん利益が出た分は投資信託の価格となって表れるので、運用がうまくいけば持っている投資信託の価格が上がって自分の資産も上がるというわけです。
iDeCoは年金なので、自分の年金をこの「投資信託」というかたちで持っておくことで60歳になるまで貯まっていく年金をさらに増やすように運用できる(かつ増えた分は非課税)ということですね。
選べる投資信託は金融機関によって微妙に異なりますが、何に投資している投資信託かという観点で見ると
・国内の株式
・海外の株式
・国内の債券
・海外の債券
・国内の不動産
・海外の不動産
というようなカテゴリに絞られますので、どの商品をというよりは「自分の年金を何に投資をするか」を考えれば必然的に商品は決まってくるでしょう。
iDeCoにおける運用資産選びは「長期運用」を前提に
ではその「自分の年金を何に投資をするか」を考えるうえで大事なのは、iDeCoにおける運用は
①長期的な視点で増えるものであること
②長期間持っていても大きな下落の危険性が少ないものであること
③iDeCo以外で持っている商品がある場合はそれも考慮すること
という大前提の下で選ぶ必要があります。
例えば株式型の投資信託であれば値動きが比較的大きく、毎日の動きは活発なように見えますが、長期的にみると日本株はそれほど大きく上がっていないのに対し、海外(アメリカ)の株式は右肩上がりで上がっていて長期的にみるとほとんどいつ買っても長期的に持っていると利益がでる商品であることが分かります。
単純に「株はリスクが高い」というイメージで選ぶのではなく、あくまでも長期的に見た時のメリットやデメリットで考えるべきなのです。
「REIT(不動産型)」をメインにするうえで知っておきたい3つのポイント

iDeCoにおいては長期での資産運用となる点を踏まえると、株式型や債券型といった比較的メジャーな投資信託よりも不動産に投資する「REIT」と呼ばれる投資信託を運用商品として選択することがオススメです。
値上がりではなく「家賃」が積み重なる安定スタイル
世の中で最もオーソドックスな「株式型投資信託」の場合、利益を生み出す(価格が上がる)のは「株価の値上がり」によるものです。
つまりその投資信託を通して運用している株式(株価)が上がるかどうかで増えるかどうかが決まります。
それに対して、REIT(不動産投資信託)の利益の稼ぎ方は、株式同様の不動産の値上がり分だけではなく、その不動産が生み出す「家賃」が積み重なることによるものです。
株価は時間が経ったからといって必ず上がるというものではないですが、家賃というのは時間が経てばたつほど積み重なる性質があるので、長期的に運用すれば(不動産の価格自体が多少下がったとしても)その期間に積み重なった「家賃収入」分が投資信託の価格に乗ってくるので、安定的に資産価格を押し上げる可能性が高いといえるでしょう。
「現物」がある安定感
極端な話、株式や債券はそれを発行している企業が潰れてしまえばその価値はゼロになります。もちろん、投資信託においては複数の株式や債券に投資をすることでゼロになるリスクはヘッジしているものの、長期になると一部の企業が潰れてしまってそれが全体の価格に影響を与える可能性もゼロではありません。
その点、不動産は「実物」に投資を行っているので一つ一つの投資対象(不動産)がゼロになるということにはなりません。
このあたりの「現物」がある資産という点も長期投資における安心につながります。
信託報酬はほかの商品より少し高いのがデメリット
投資信託を持っていると、持っている額に応じて「手数料」として「信託報酬」というものが発生します。これは特別に何か支払うわけではなく、すべて投資信託の価格から差し引かれることになります。つまり年間を通して投資信託の価格というのはこの手数料分を差し引いて推移していることになるのです。
この仕組み上、手数料が高い・安いといった実感を持ちにくいのが投資信託なのですが、もちろんこの差し引かれる「信託報酬」は安いに越したことはありません。
特に長期での運用となるとトータルで差し引かれる金額も小さくはないのですが、REITの信託報酬は他の商品(株式型や債券型など)と比べて若干高くなりがちなのは認識しておくべきポイントです。
具体的な商品は金融機関によって異なる
具体的な商品名は加入した金融機関によって異なります。
金融機関によって選択できる商品数は20~30種類が一般的です。
そのなかで「REIT」の数は国内の不動産、海外の不動産それぞれ1本ずつというのが相場なので、これらの商品を組み合わせて指定するとよいでしょう。
楽天証券の場合
①国内の不動産に投資する商品
三井住友・DC日本リートインデックスファンド
野村J-REITファンド(確定拠出年金向け)
②海外の不動産に投資する商品
三井住友・DC外国リートインデックスファンド
楽天証券の場合は三井住友シリーズの日本型、外国型で半分ずつの運用を行うことがオススメです。
日本の不動産型には野村のものもありますが、信託報酬が「1.026%」とかなり高いので三井住友(同0.27%)を選ぶのが賢明でしょう。
SBI証券の場合
①国内の不動産に投資する商品
DCニッセイJ-REITインデックスファンドA
One-MHAM J-REITアクティブファンド(DC年金)
ニッセイJリートインデックスファンド
DCニッセイJ-REITインデックスファンド
②海外の不動産に投資する商品
三井住友・DC外国リートインデックスファンド
SBI-EXE-iグローバルREITファンド
野村世界REITインデックスファンド(確定拠出年金向け)
SBI証券は商品数が多いですが、結局のところ選ぶのは「日本」と「海外」の2種類で十分です。それぞれ信託報酬の最も低い商品は「ニッセイJリートインデックスファンド」(日本)と「三井住友・DC外国リートインデックスファンド」(海外)となりますのでこの2本での運用がオススメです。
iDeCoでREIT運用する際は、ほかに持っている商品も見直しを!
iDeCo以外にも投資信託を持っている人も多いと思います。
その際には自分の資産全体として投資先(商品)をマネジメントすることが重要です。
例えばつみたてNISAでアメリカの株式型の投資信託を積み立てているのにiDeCoにおいても同様の資産で運用してしまうと、将来の資産すべてがアメリカ株に依存してしまうことになります。
投資先の商品(株式・債券・不動産)、地域(国内・先進国・新興国)などを分散することでリスクをヘッジして安全な資産運用となるように意識することが大切です。
iDeCoでREIT(不動産)での運用を行うのであれば、それ以外の資産では株式型や債券型の投資信託を積極的に検討するようにしましょう。